感染性腸炎(かんせんせい ちょうえん)
概要
感染性腸炎(ウイルス性・細菌性・寄生虫)は、ウイルス・細菌・寄生虫などの病原体が腸に入り、下痢・おう吐・腹痛・発熱などを起こす病気の総称です。原因としてはノロウイルス・ロタウイルスなどのウイルス、カンピロバクター・サルモネラ・腸炎ビブリオ・病原性大腸菌(O157等)などの細菌、ランブル鞭毛虫・赤痢アメーバなどの寄生虫が知られています。感染経路は、人から人(糞口感染)や汚染された水・食品を介することが多く、季節や流行状況により原因は変動します。
主な症状
- 下痢(ときに水様)、吐き気・おう吐、腹痛、発熱
- だるさ、食欲低下、脱水(口の渇き・尿が少ない・ふらつき など)
代表的なノロウイルスでは潜伏期間が24〜48時間、症状は通常1〜2日で治まるのが一般的です。
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は受診をご検討ください。
- 水分がとれない/強い脱水が疑われる、ぐったりしている
- 高熱・血便・激しい腹痛がある
- 症状が長引く(おおむね3日以上改善しない)
- 基礎疾患がある/妊娠中/高齢などリスクが高い
多くは対症療法で改善しますが、重症例や集団発生が疑われる場合は検査や点滴が必要になることがあります。
診断の流れ
- 診察・問診:発症前の食事、周囲の発症状況、海外渡航歴、便の性状(血便の有無)などを確認します。
- 必要に応じて検査:
・便検査(便培養・抗原検査 など)は、重症、血便、集団事例疑い、渡航者下痢症 などで選択的に実施します。
・血液検査で脱水や炎症の程度を評価します。
内視鏡(胃カメラ/大腸カメラ)は急性期には通常不要です。経過が長い、血便が続く、別の病気が疑われるときに検討します。
治療(基本は「水分と休息」)
- 水分と電解質の補給:少量ずつ、こまめに。状態に応じて経口補水液(ORS)や電解質含有飲料を用います。重い脱水は点滴が必要です。
- 食事:吐き気が落ち着いたら、消化のよいものから少しずつ再開します。
- 整腸剤・制吐薬:症状に合わせて使用することがあります。
- 下痢止めの注意:血便や高熱があるとき、腸管出血性大腸菌(O157等)が疑われるときは、腸の動きを抑える薬は避けます。
- 抗菌薬(抗生物質):多くの急性下痢症では不要です。重症例や渡航者下痢症、赤痢・早期のカンピロバクター腸炎など、適応が限られます。
うつさない・再発させないために(ご家庭・職場で)
- 手洗い:トイレ後・調理前後・おむつ交換後は石けんと流水でしっかり。ノロウイルスではアルコールだけでは不十分で、目に見える汚れがある場合は石けん+流水が推奨されます。
- 消毒:嘔吐物・便が付いた場所は次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1000ppm)で拭き取り→水拭き。ドアノブ・手すり等の拭き取りは0.02%(200ppm)が目安です(素材の腐食・漂白に注意)。
- 加熱:二枚貝など加熱が必要な食品は中心温度85〜90℃で90秒以上を目安にしっかり加熱。調理後の二次汚染にも注意します。
- 食品を扱う仕事:症状がある間は従事しないことが推奨されます(復職の可否は職場の基準・保健所の指示に従ってください)。
当院でできること
- 脱水・重症度の評価、必要に応じた点滴・制吐薬の投与
- 便検査や血液検査の手配(重症/血便/集団事例疑い/渡航歴あり など)
- 内視鏡精査が必要なケースの適切なタイミングでのご提案
- 再発予防のアドバイス(手洗い・消毒・食事の注意)と地域保健所との連携
よくある質問(FAQ)
Q. 市販の下痢止めは飲んでよい?
A. 血便・高熱・強い腹痛があるときは使用を避けます。それ以外でも長く飲み続けないでください。迷ったらご相談ください。
Q. 抗生物質は必要?
A. 多くは不要です。重症例・特定の細菌感染や渡航者下痢症などで医師が判断して使います。
Q. 家での消毒は何を使えばいい?
A. 嘔吐物や便が付いた場所は0.1%(1000ppm)、日常の拭き取りは0.02%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウムが目安です(金属腐食・漂白に注意)。
参考文献
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」— 二枚貝の加熱条件(85〜90℃で90秒以上)など。 [oai_citation:0‡厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html?utm_source=chatgpt.com)
- 厚生労働省『抗微生物薬適正使用の手引き 第三版』— 急性下痢症での抗菌薬の適応、手洗い(石けんと流水)推奨。 [oai_citation:1‡厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001169116.pdf?utm_source=chatgpt.com)
- 日本感染症学会/日本化学療法学会『腸管感染症ガイドライン(2015)』— 多くは対症療法、止瀉薬の注意・抗菌薬適応の限定。 [oai_citation:2‡感染症情報センター](https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2015_intestinal-tract.pdf?utm_source=chatgpt.com)
- 東京都感染症情報センター「感染性胃腸炎とは」— 原因・流行時期の概説。 [oai_citation:3‡東京都交通局 IDSC](https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/gastro/?utm_source=chatgpt.com)
- 国立感染症研究所(NIID)「感染性胃腸炎」解説— 症状と診断の基本。 [oai_citation:4‡id-info.jihs.go.jp](https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ka/intestinal/010/intestinal-intro.html?utm_source=chatgpt.com)
- 政府広報オンライン「ノロウイルスに要注意!」— 潜伏期間24〜48時間、症状は1〜2日など。 [oai_citation:5‡政府オンライン](https://www.gov-online.go.jp/article/201811/entry-7449.html?utm_source=chatgpt.com)
- 福岡県「感染性胃腸炎(ノロウイルス中心)」— 次亜塩素酸ナトリウム0.02%/0.1%の使い分け。 [oai_citation:6‡福岡県庁](https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kansen2012110602.html?utm_source=chatgpt.com)
注意:本ページは一般向けの解説です。検査・治療の方針は個々で異なります。気になる症状が続く場合は当院へご相談ください。
